説明
近年、室町幕府期に関する研究成果が多く刊行されているが、足利将軍の奉公衆・進士氏に関する研究はほとんどない。本書『史料で読み解く 室町幕府奉公衆 進士氏の系譜』は、進士氏の系譜と事跡を、史料と記録をもとにまとめたもので、いくつかの新しい指摘がなされている。
たとえば、進士氏七代の美作守国為は、六代の美濃守友行と宮内卿局との間にできた子とされているが、実は、将軍義政のご落胤を友行が我が子として引き取ったと考えられること。また、八代・美作守国秀と九代・美作守晴舎はいずれも国為の子であって、兄弟であることなど。
『永禄六年諸役人附』に記載されている進士知(聟)法師は、将軍足利義昭が幕府再興にあたって、絶家となっていた進士氏を継がせるため他家から壻養子を迎え入れたことによるものとの指摘も新説である。進士聟法師の本名、その後、進士作左衛門を名乗ってからの波乱万丈の生涯については目からうろこの展開である。本書では、作左衛門が加賀藩に七百石で召し抱えられ、子孫は加賀藩士として幕末まで仕えたことが確認されている。
一方、加賀進士氏とは別に、熊本細川藩の藩医・小川氏の『先祖附』にも、進士氏を先祖とする記録が残されている。御医師・小川氏の『先祖附』翻刻を契機に、今後、進士氏研究がさらに深められることになるであろう。



