説明
本書は、教育方法論の普遍的な存在意義に留意しつつ、現代から未来に生きる子どもたちにとって、より良い教育とは何かを考えるための検討材料である。本書では、アクティブ・ラーニングの活用事例を、視聴覚機器や情報機器の活用も含め、具体的に紹介し、再検証する。コロナ禍の下でICTの活用が急速に進んだことは事実であるが、それ以前からICTを含む教育機器の活用は、教育方法論上の主要なテーマでありつづけてきた。本書では、ICTの活用の黎明期ともいうべき1980年代から今日までのICT教育の展開を振り返りつつ、ICTの活用の今後の展望について考察を加える。
目次
序章-21世紀の教育とアクティブ・ラーニング
本書と『教育方法原論』
教育方法論の基礎-本書の概要
アクティブ・ラーニングとは-本書の目的
アクティブ・ラーニングの定義について
学習ネットワークの構築
アクティブ・ラーニングと学習ネットワーク(連携)の構築が目指すもの
教育方法論の研究目的と問題意識
<問題演習1>アクティブ・ラーニングとは
第1部 理論編
第1章 教職課程におけるアクティブ・ラーニングとICTの活用
第1節 アクティブ・ラーニングの本質とICTの活用
第2節 アクティブ・ラーニングの多様性
-ロールプレイ・グループ討議・模擬授業など
(1) 入学式後のホームルームで担任教師として自己紹介する
(2) 生徒指導の場面を想定して
(3) ロールプレイの留意点
第3節 グループワークの実践例
-教育社会学等におけるグループ討議とプレゼン
第4節 教育原論・生徒進路指導論等におけるブレインストーミングとマインドマップ
第5節 教科(看護科)の教育方法論におけるアクティブ・ラーニングとCAI・ICT
(1) ICTを活用した授業-「看護教育方法Ⅰ」(2年生)
1)「CT-MRI解体新書」等の活用
2) 肺音の聴診トレーニング
(2) 教育実習に向けたICT活用-「教職実践演習」・「看護教育方法Ⅱ」(4年生)
1)模擬授業「骨格と筋肉」
2)三観(教材観・生徒観・指導観)
3)模擬授業におけるICTの活用
第2章 学習とコンピテンシー
第1節 コンピテンシーとは何か
読解力
数学的リテラシー
科学的リテラシー
第2節 新指導要領の日本版「コンピテンシー」
第3節 グローバル・スタンダードから見た日本版「コンピテンシー」
第4節 今求められる教育実践とは
第3章 授業実践の構造-計画・実施・評価
第1節 授業の計画
(1) 生徒の学習経験への配慮
(2) 季節や行事など適切な活動時期を生かす
(3) 各教科等との関連を明らかにする
(4) 外部の教育資源の活用及び異校種との連携や交流を意識する
第2節 学習活動と指導法
(1) 定められた目標・内容に基づく指導
(2) 他者との協働、問題解決、言語活動
(3) ICTの活用
(4) 体験的学習
(5) 多様な学習形態
(6) 学校図書館・地域の社会資源の活用と連携
第3節 アクティブ・ラーニングの手法
第4節 アクティブ・ラーニングの評価
第5節 パフォーマンスを評価する-ルーブリック評価の活用
第2部 実践編
第4章 アクティブ・ラーニングへの第一歩
-学習の深化を目指したフィートバック・システムの利用
第1節 高校生の妊娠と人権問題
第2節 生徒自身が考える問題解決の道すじ
第3節 「何が問題か」を探る
第4節 真の人権保障のために
第5節 ゆたかな個性を育てる
第5章 生徒によるプレゼンと討議
第1節 教育課程におけるアクティブ・ラーニングの意義
第2節 Mさんからの手紙 -アクティブ・ラーニングへのいざない
第3節 日米高校生の討論から -留学生が残したメッセージ
第4節 社会問題を考えるプレゼン学習の試み -公民科におけるアクティブ・ラーニング
(1) 「現代社会」における報告学習
(2) 「政治・経済」における報告学習
a. テーマの選定
b. 報告学習の内容
①悪徳商法-消費者問題
②環境問題
③PKO・従軍慰安婦問題-戦争と平和をめぐって
第5節 生徒からみたプレゼン学習の授業評価
第6章 アクティブ・ラーニングとしての小論文作成指導
第1節 小論文指導の11年間の歩み
(1) テーマの選定の自由化-テーマの自由化による論文の多様化
(2) メディアを通した意見表明-新聞に掲載された高校生の主張
第2節 小論文作成指導と評価基準
(1) 視聴覚教材の利用
(2) 小論文作成の指導
第3節 図書館との連携
第4節 様々な教科のアクティブ・ラーニング-他教科・他校種間の連携
第5節 児童生徒が求めている「学び」とは
第7章 より良い生き方を求めて-生命の誕生から死まで
第1節 憲法と人権をアクティブに学ぶ
第2節 生徒が主人公のアクティブ・ラーニング
第3節 高校版「白熱授業」-自分の生きる道を探る
第4節 生徒による生徒のための生徒の「性教育」
第5節 人権保障の実現とアクティブ・ラーニング
第6節 アクティブ・ラーニングと授業づくり
<問題演習2>採用試験出題例からみた「授業づくり」
第8章 学校図書館との連携-「平和」を考える教育の実践
第1節 教育方法論における連携と協働
第2節 高校における「平和教育」の意味
第3節 公民科「政治・経済」における平和学習の位置づけ
第4節 授業展開の概要
(第1時間目)平和学習へのモチベーションを高める
(1) 沖縄戦と有事立法
(2) 広島・長崎の被爆-劇画「はだしのゲン」を通して
(3) 核抑止論と日本
(4) 産軍複合体制
(5) 現在の紛争発生地域
(第2時間目)視聴覚教材「アトミック・カフェ」の活用
(1) ドキュメンタリー映画「アトミック・カフェ」
(2) 高校生は、反核映画をどのように見たか
(3) 生命の尊厳と核兵器
(4) 視聴後の指導について
(第3時間目)主体的学習のフィールドとしての学校図書館
(1) 文章表現による平和学習-小論文とレポートの評価基準
(2) レポート作成のポイント
第5節 学校図書館活用の準備・実践・評価
(1) 学校図書館活用の準備
(2) 条件の克服と活用
(3) 図書館での授業
(4) 学習活動の評価
第6節 生徒の社会への関心と理解を進化させるために
第9章 全校で取り組むアクティブ・ラーニング
-自己を見つめ、社会と向き合う新聞投稿の試み
第1節 通学問題から生まれたアクティブ・ラーニング
第2節 生徒にとっての小論文とは
(1) 小論文作成への動機づけ-授業の共通化と新聞の活用
(2) 小論文作成前の事前準備
(3) 作成時の指導
第3節 新聞投稿とその反響
<問題演習3>採用試験出題例からみた「学校づくり」
第10章 教育実践と情報処理プログラムの利用
-授業設計とコンピュータ
第1節 情報処理システムの活用による効果的教科指導
第2節 コンピュータ採点の新展開
第3節 コンピュータによるS-P表の作成
第4節 コンピュータ処理された学習データの活用-注意係数を中心として
第5節 生徒理解のためのコンピュータ利用
第6節 情報処理を教科教育・生徒指導に生かす
<問題演習4>採用試験出題例からみた「アクティブ・ラーニング」
終章 アクティブ・ラーニングの源流と未来
<問題演習5>採用試験出題例にみる教育思想