説明
本書は、障害児を含めたいろいろな子どもたちを対象とした、多様性のある園での保育の内容・方法、園づくりになどについて言及した書籍である。
日本保育学会等で強調されている「保育の質の向上」を目指すために、特別なニーズのある乳幼児の「居場所づくり」が欠かせない点に注目した。近年、保育・幼児教育界では「居場所」という用語を頻繁に耳にする。しかし、特別なニーズのある子どもたちの分野に目を向けると、この用語は散見するくらいである。それは、子ども理解の追求、どのような諸能力を培うのか、多様性が進む中での対応などが十分に検討されてこなかったからだと考えられる。
そこで、居場所をどうとらえるか、子どもの主体性・ニーズ、保育・教育の目的(どのような力をつけるのか)、創造・表現、場の広がり、保護者や地域との連携支援、ライフステージ支援などについて整理した。
特別なニーズのある乳幼児を中心に考えているものの、小学校・中学校の通常の学級の8.8%を発達障害児が占める時代なので、発達障害児も対象とした。その他、外国にルーツのある子どもなども視野に入れている。
執筆陣は、大学院を修了して保育者養成校の教員や園長、園の教員などを務めている。保育の中身を充分に心得ており、学会などで新進気鋭の研究者となりつつ者もいる。
保育者養成校で授業(障害児保育やインクルージョン保育・教育など)をしている者もいるので、学生向けのテキストとしても使える。幼児期と児童期の円滑な接続を考慮すると、小学校教員養成課程でも学んでいただきたい。もちろん、幼稚園・保育所・こども園などの保育現場で働く保育者の方にも読んでいただきたい。
そのために、あまり専門用語を使わず「読みやすい」書籍になるよう心掛けた。執筆者が経験してきた保育実践やエピソードをふんだんに盛り込んでいる。
目次
第1章 インクルージョン保育を実践するとはどういうことか
第1節 分離保育の歩みの中から
第2節 統合保育の歩みの中から
第3節 インクルージョン保育の提起
第4節 障害児保育を支えるキーワード・理念
第2章 特別なニーズのある子どもの居場所を作る
第1節 安心感につながる居場所づくり
第2節 「居場所」とは何か
第3節 居場所づくりのための保育者の役割
第3章 からだ・ことばを育む
第1節 からだが育つことでことばが育まれる
第2節 ことばの種を蒔き、要求を育てる
第3節 信頼できる大人の存在
第4章 かかわりを育てる
第1節 その子の見ている世界に共感する
第2節 一緒に遊ぶ
第3節 遊びを真ん中にしてかかわりを育てる
コラム① 津守眞の実践から学ぶ
第1節 津守の実践の先駆性
第2節 知的障害幼児のための保育
第3節 実態把握のため乳幼児の発達診断法の考案
第4節 特別保育室での障害児保育
第5節 私立の愛育養護学校での障害児保育
第5章 遊びを広げる
第1節 特別なニーズのある子どもの遊びの姿と加配保育者の関わり
第2節 特別なニーズのある子どもを核にした生活発表会の「劇遊び」の取り組み
第6章 生活を作る
第1節 なぜ生活の視点が必要なのか
第2節 障害児を取り巻く生活環境の変化
第3節 生活リズム、基本的生活習慣の確立
第4節 障害児の発達と生活
第7章 保護者を支援する
第1節 乳幼児期の障害児をかかえる保護者のたいへんさ・苦労
第2節 乳幼児期の障害児を支える実践例
第3節 場面緘黙児の事例から考える保護者支援・連携の視点
第8章 保育記録をとる―居場所を可視化する保育実践の方法―
第1節 保育記録をとる=保育を振り返る時間
第2節 保育記録の在り方と子ども理解の枠組み
第3節 視点を定め、エピソード記述をとる
第4節 保育記録による子ども一人ひとりの成長とクラス集団としての居場所の可視化
第5節 他者と共有し、語り合える質の高い記録をめざして
コラム② 倉橋惣三の実践から学ぶ
第1節 略歴
第2節 保育に生かせる名言
第3節 倉橋の残した業績
第9章 多様な子どもたちを理解する
第1節 多機関連携を通して発達支援を行ったP
第2節 母親との愛着形成をしつつ発達するU
第3節 ダイバーシティ・インクルージョン保育の重要性
第10章 幼児期と学齢期をつなげる
第1節 ライフステージ支援に必要なこと
第2節 多様な子どもたち
第3節 保育者に求められること
第11章 保育士養成と全国保育士養成協議会の役割を考える
第1節 保育士養成課程の実情と課題
第2節 全国保育士養成協議会の役割を考える
第3節 保育士養成からみる特別なニーズがある子どもの居場所づくりの展望と課題
第12章 小規模園だからこそできる「居場所」づくり
第1節 小規模園における混合クラスの今日的意義
第2節 小規模園の特性と可能性
第3節 特別なニーズへの具体的な取り組み
第4節 実践事例から見える「居場所」のかたち
第5節 保護者・地域との協働
第6節 課題と今後の展望
第13章 表現に注目する ―造形活動における場の広がり―
第1節 絵の具遊び(色を楽しむ)
第2節 スタンプ遊び(形を楽しむ)
第3節 粘土遊び(手触りを楽しむ)
第14章 音は共感の世界を創り出す
第1節 音を共有する
第2節 音の活動は役割を生み出す
第3節 音を通して主役になる
第15章 これからの特別なニーズのある乳幼児の保育を拓く
第1節 補償教育論の限界
第2節 存在論への挑戦
子ども・保護者・園をつなぐQ&A
Q.「発達障害」という用語を聞く時代になったが、どのような障害があるのか。
Q.障害児を理解するために、大切な観点は何か。
Q.園では集団づくりが大切であるといわれる。どのように進めればよいか。
Q.「ダイバーシティ・インクルージョン保育」が叫ばれるようになったがその理念とは何か。
Q.地域で支えることの意義をどう考えればよいか。
Q.障害児をもつ保護者支援のポイントはどこにあるか。
Q.特別支援教育が幼児期から行われているが、その理念と取り組みは何か。
Q.合理的配慮が必要であると言われるがその要点は何か。
Q.園内での支援体制(協働)についてどうあればよいか。
Q.今日的な「療育」の特徴とはどう捉えたらよいか。
障害児保育の歩み〈年表〉
事項・人物索引



