説明
本書は、時間・空間・仲間という三間を意識して執筆された。
【第1:時間】従来の先行研究では全く指摘されていない、児玉昌や伊沢修二が愛知にいた時期の功績について述べた。また、明治期から大正期に公刊された幼児教育雑誌を取り上げて、これまでその雑誌では扱われてこなかった児童保護問題を追究した。
【第2:空間】研究領域とでも言えそうだが、養護概念の検討を通して学校(教育)領域と施設(福祉)領域を検討した。
【第3:仲間】障害児保育実践と理論の創造に尽くした斎藤公子の人物史を取り上げた。また、ダイバーシティという称し方を通じて教育機関と福祉機関等にいる多様な当事者たちへの支援を考えるきっかけとなる。
時間・空間・仲間という三間が、障害児も含め、すべての子どもたちの「発達保障」「生活保障」に不可欠である。三間の充実がこれからの障害児の教育と福祉の質の向上、子どもの最善の利益の優先(「子どもの権利条約3条」)にはなおさら必要になる。
第1章 愛知師範学校における「幼児の教育」の端緒についての検討
1.はじめに
2.伊沢修二(1851-1917)の尽力
3.愛知県女子師範学校附属幼稚園の創設時期について
4.伊沢の「幼児の教育」構想についての諸見解
5.愛知師範学校・伊沢の「幼児の教育」構想
6.おわりに
第2章 幼児教育雑誌『婦人と子ども』『幼児教育』に記載された児童保護問題の検討
1.はじめに
2.整理・分析視点について
3.整理・分析視点のまとめ
(1)創設者などの保護・教育思想
(2)対象者
(3)関係機関の紹介
(4)保護・教育方法
(5)地域社会との関係
(6)諸外国の紹介
4.おわりに
3章 教育と福祉での「養護」概念
1.はじめに
2.戦前の「養護」概念の整理
(1)時期区分
(2)戦前の教育学における「養護」の源泉
(3)戦前の学校保健での「養護」の使われ方
(4)戦前の特殊教育との関係の「養護」
3.戦後の「養護」概念の整理
(1)積惟勝の「集団主義養護論」の提唱
(2)小川利夫の「教育福祉論」の提唱
4.おわりに
第4章 愛知県立精神病院院長時代の児玉昌の活動について
1.はじめに
2.愛知県における主な活動についてー1932年から1940年代までを対象にー
3.愛知県立精神病院の歩みの中から
4.医学と福祉の連携(病院から施設づくりへ)
第5章 斎藤公子の障害児保育実践に関する研究
1.はじめに
2.略歴
3.斎藤の底流となる保育理論
(1)身体の発達と脳の発達の関係
(2)自然のもつ良質な感覚
(3)子どもの発達の礎を築き、待つこと
(4)感性を大切に
(5)集団の中で育つ
4.斎藤の障害児保育実践づくり
(1)自然豊かな保育環境
(2)リズム遊び・身体づくり
(3)描画による表現活動
(4)子ども・保護者・保育者との集団づくり
5.おわりに
第6章 障害幼児を支援する保育形態(場)の変遷に関する検討
1.分離保育(セグリゲーション)の開始
2.統合保育(インテグレーション)の志向へ
3.ノーマライゼーション(normarization)理念の広がりへ
4.インクルージョン(inclusion)という広がりの中で
5.ダイバーシティ・インクルージョン(diversity inclusion)の新たな理念の構築へ
第7章 障害児保育の質の向上をめざして
1.はじめに
2.ダイバーシティ・インクルージョン社会の進展
3.保育現場における対象児の多様性
(1)「気になる子」の基本的な子ども理解
(2)発達障害のある子どもの実態と支援
(3)外国にルーツのある子どもの実態と支援
(4)病弱・医療的ケアを必要とする子どもの実態と支援
4.園内での共通理解に
(1)インクルージョンについて
(2)ダイバーシティ・インクルージョンについて
(3)合理的配慮について
5.おわりに
資料 「平和」と戦災孤児・障害児者
あとがき
初出一覧
事項・人物索引